top


サクラナク




 十二月に入ったばかりの寒い朝だった。わたしは参考書を開いていて、後ろの席では女の子集団がはしゃいでいて、何人かの男子が彼女たちのことを見ながら何か話している、そんないつもどおりの朝だった。


 時はまさに受験間近。クスクス笑いがあがるたびに不安が湧き上がるのもいつものことで、わたしは鞄からイヤホンを取り出そうとしていた。


 その手が止まったのは、誰かの言葉が耳に入ったからだった。


「てかさー、今F組ヤバくない? 先週だけで三組もカップルできたんだって!」


 F組。今、確かにそう言った。


 わたしはイヤホンを机の上に置いて、ペットボトルを鞄から取り出した。なるべくゆっくりとキャップを外す。そうしている間に別な誰かが、(本人はそのつもりなど全くないだろうけれど)わたしの代わりに質問してくれた。


「えー、誰!? 全然知らないんだけどー」
「マヤ知らないの!? 有名じゃん、鈴木くんとアヤちゃんと――」
「あ、その二人は知ってる!」


 とりあえず、第一ペアはセーフだ。


 ペットボトルに口をつける。後ろの子たちは、これでもかというくらい甲高い声で、鈴木くんとアヤちゃんが付き合うに至った経緯を話し始めた。わたしはそのどちらも知り合いじゃないし、知るつもりもない。それよりも、彼女たちの話題が別な方向に逸れすぎてしまうことのほうが心配だ。


 幸いにも鈴木くんとアヤちゃんの話はそれほど膨らまず、彼女たちの話題は元に戻ってきた。


「あと、ちゃーちゃんと高橋でしょ?」


 第二ペアも、わたしの知らない二人だった。セーフ。


「あー、一緒に帰ってるの見たー!」
「ねー! 付き合ってるのかなーとか言ったけど付き合ってたんだー」
「意外だよね! だって――」


 そう長々と口をつけているわけにもいかず、わたしはペットボトルを置くと、ゆっくりキャップを締めた。仕方なく参考書に目をやると、書かれている数式が奇怪な形をつくっているように見えた。


 まだ安心するわけにはいかない。まだ三組目を聞いてない。


 もちろん、わたしは校内の恋愛事情を誰よりも把握したがるような人間ではないし、人の会話を盗み聞きする趣味があるわけでもない。でも、F組となると話は別なのだ。


 わたしは時々ページをめくりながらも、神経は彼女たちのほうに向いていた。ようやく三組目を聞き出すことができたのは、少し時間が経ってからだった。


「それでさ、三人目は?」誰かが言った。
「ああ、けんちゃんと……」


 彼女がそこで声をひそめたせいで、わたしはけんちゃんとやらの相手を聞き損ねた。けんちゃんは、男か? 女か? 男だったら、とりあえずセーフだ。わたしはもう参考書をめくるのすらやめて、彼女たちの会話に耳をすませていた。


「けんちゃん!?」
「ついにけんちゃんに彼女できたんだね! ってか佐藤って誰?」
「文芸部の――」


 けんちゃんに彼女。ということは、けんちゃんは男だ。


 さっきまで変な位置に行っていた心臓が、戻ってきた気がした。わたしは音を立てずにため息をついて、参考書のページをぱらぱらと戻した。机の上に放っておいたイヤホンを再び手にとって、


「F組といえばさー、蓮見くんって、いつから彼女できたの?」


 今度は手が止まったというよりも、脳の動きが止まった気がした。そんなわたしのことを置いて、彼女たちの話は続いていく。追い討ちをかけるように、また誰かが言った。


「それ、だいぶ昔の話でしょー」
「なんだ、結構前からなの? ショックー! ファンだったのにー」
「えー蓮見くん全然イケメンじゃないよ〜」


 笑いながら、話は進んでいく。わたしはゆっくりと参考書を閉じた。


 翼くん。翼くんには、彼女がいたんだ。


 話題が移り変わっても、わたしの身体はしばらく動きそうになかった。









 彼女たちのいう蓮見くん、わたしにとっての翼くんが同じクラスになったのは、一年生の時だけだ。その頃わたしは高校生活というものに計り知れない希望を抱いていて、春休みからずっと入学を楽しみにしていた。もともとわたしは人と話すのが苦手で、中学生の頃はよくそれでからかわれた。でも、高校には、わたしのことを笑う人などいないだろうと思った。入学するとわたしは誰にでも積極的に話しかけて、なんとか気の利いたことを言おうと躍起になっていた。


 確かにここにはわたしのことを笑う人はいなかった。わざと聞こえるように笑う人はいなかった。


 初めての夏休み、遊ぶ人がいないのは部活のせいにしていたが、実はそうではなかったらしい。それを知ったあたりからわたしはひとりでいることが多くなった。十月に入る頃には、人に話しかけることが中学生の頃よりも苦手になっていた。人と話せば話すほど、嫌われる機会をつくるように思われたのだ。直接的にトラブルのなかった人も、心を閉ざしたわたしを避けるようになった。


 そんな中で、変わらずに話しかけてくれたのが、翼くんだった。


 あるとき隣の席になった翼くんは、何かにつけてわたしに話を振ってくれた。授業の感想だとか、翼くんの部活の話だとか、好きな音楽の話だとか。どんなに当たり障りのない話でも、翼くんが楽しそうに話すから、わたしも翼くんと話すのを楽しみにしていた。どちらかといえばしゃべらせてばかりいたけれど、なるべく一言以上で返せるように努めた。


「ごめん、授業寝ちゃったからノート見せて!」とおでこに赤い跡をつけて手を合わせる翼くんに、わたしは苦笑いをしながらノートを見せた。いつそう言われてもいいように、先生の細かな注釈も書きとめるようになっていた。部活をがんばっている翼くんを起こすのは憚られ、先生が気づきそうなときだけわたしはさりげなく翼くんを起こした。


「古川って、来年の類型何にする?」


 あるとき、翼くんが尋ねた。


「理系……かな……まだ、完全に決めてはないんだけど」


 わたしがぎこちなく微笑むと、翼くんは少しおおげさなくらい目を見開いた。その瞳があまりに澄んでいることにわたしは驚いた。


「そうなの? あ、数学得意だしな。いつも勉強しててすげえなーって思ってた」
「ち、違うよ。苦手だから、頑張らないといけないなって」


 本当は休み時間手持ち無沙汰なのをごまかすためなのだが、彼はなるほど〜と言って、


「偉いなあ」と何度も頷いた。


「そんなことないから」


 わたしはそう否定した後で、素っ気無さ過ぎたかと思い、柔らかな口調で、


「蓮見くんは、どうするの?」と尋ねた。


「俺? 俺はバリバリ文系だよ〜。計算とか全然できないし」
「そうなんだ」
「分かれちゃうな」


 寂しそうに笑う彼になんと返事をすればいいのかわからなくて、わたしはただ「そうだね」と返した。




 ある日の放課後、わたしは先生に呼び出された。先生も、わたしがクラスで孤立していることに気づいていて、何か心配ごとはないか、などと尋ねた。わたしは先生の優しさはありがたく思ったが、こればかりは先生にもどうしようもない、自分の内向的な性格が悪いのだからと思って、大丈夫ですと答えた。


 黒い空から雨が降っていた。手をさすりながら下駄箱に行くと、そこにいたのは翼くんだった。翼くんはわたしに気づくと、よっと手を上げた。


「古川。お疲れー」


 翼くんはバスケ部のウィンドブレイカーを着ていた。帰るところだったらしく、リュックを背負っていた。


「……お疲れさま」


 わたしが返すと、翼くんは白い息を吐きながら、


「寒いね〜、雨まで降ってくるから、参ったわ」


 ぜんぜん参ってなどいない様子で笑った。


「うん……本当に、寒い」


 そう言いながら、わたしは心が温かくなるのを感じていた。頬が赤くなっていったのは、きっと翼くんの頬と鼻の頭が赤かった理由とは違う。


「俺、傘忘れちゃってさー。立ち往生」
「それは……友達のに入れてもらえば良いのに」
「あー……うん、そうなんだけどね。みんな帰っちゃって」


 翼くんは曖昧に笑った。彼のことだから、片づけかなにかしている間にみんな帰ってしまったのだろう。そう思ってわたしは鞄から黒い折りたたみ傘を取り出し、彼に渡した。


「わたしは長いのがあるから、これ使って」


 そのときほど、地味な傘を持っていてよかったと思ったことはない。


「え? ありがとう!」


 翼くんの笑顔が眩しくて、わたしは目を伏せた。


「……いいんだよ、これくらい」


 わたしにその笑顔を見せてくれることに比べれば、これくらいなんでもないんだよ。


 そう言うことはできなくて、わたしは静かに微笑んだ。




 あるとき、彼はわたしに言った。


「翼、でいいよ」
「え?」


 どういう話の流れでそういわれたのか覚えていないが、戸惑ったことはよく覚えている。わたしは目を瞬いた。


「呼び方。本当はそう呼んでほしいんだよねー。中学の頃は全然苗字で呼ばれたことないしさ」
「……そうなんだ」


 わかった、と素直に言えなかったわたしに、きわめてさりげなく翼くんは尋ねた。


「古川のことも、下の名前で呼んでいい?」


 近くの席の男子が、わたしと翼くんを見て何か言っていた。わたしは慌てて答える。


「駄目だよ。みんなに誤解されるから」


 そのときわたしは翼くんのことを思ってそう言ったのだが、今にして思えば彼は違うように受け取ったのかもしれない。そうであってほしい――これはわたしのわがままだけど。というのも、それからなんとなく言葉を交わすのが気まずくなってしまったのだ。


 結局彼がわたしのことを下の名前で呼ぶことはなくて、わたしも彼を直接「翼くん」と呼ぶことはなかった。心の中では何度も呼んだけれど、そうこうしている間に最後の席替えがあったのだった。


 男子の中にも何人かクラスになじめない人はいたけれど、翼くんはそういう人たちとも親しげに話しかけ、一緒にお弁当を食べては談笑していた。普段は難しい顔ですごす人も、彼と一緒にいると自然と笑顔になる。魔法みたいに……


 その魔法は、暗かったわたしの一年間をずっと満たし続けていた。




 翼くんが理系に進んだことを知ったのは、二年生になってからだった。最初の中間テスト、その成績優秀者を見たときだ。


(三位……蓮見翼……数学IIB、理系……?)


 自分の名前の真上に書かれた翼くんの名前をなぞっていると、横から女の子がひょいと覗いた。


「ん、蓮見くん? カッコいい人だよね〜」
「え? そ、そうだね」


 わたしは曖昧に同意した。彼が理系に進んだことや、数学で成績上位者に入っていることが意味するところを考えるのに手一杯だった。


 背伸びをやめたわたしには、移動教室のときや昼休みに一緒にいる友達もできて、無難な一年間を送った。一年生のころに戻りたいとは思わなかったけれど、何か大切なものをそこに置き忘れているような気がしていた。そういえば翼くんに傘を返してもらっていない、と思い出したけれど、忘れたものはそれだけではないと思った。


 時々廊下ですれ違う翼くんは、少し様子が変わったみたいだった。身長が前より伸びたとか、髪型を変えたとかいうこともそうだし、なにより女の子と話しているところをよく見るようになった。でも、澄んだ瞳はずっと変わらなくて、彼と目が合うたびにわたしは慌てて顔を伏せ、追いかけてくる彼の視線を振り切るように足を早めた。なぜそうするのか自分でもわからなかったけれど、そうしなければいけない気がした。


 そうしてわたしは二年生を終え、三年生もぼんやりしている間にもう半分以上が過ぎ去ろうとしていた。









 翼くんに彼女ができたという話に、最初こそ動揺したものの、取り乱すほどのショックを受けていない自分が嫌だった。それを知った後も、時間は早送りするようにあっけなく過ぎていき、初雪も新年も通り過ぎて、気づけば最初の入試も近づいていた。


 残りの回数も数えるほどになった体育の授業へ向かうとき、あれから初めて翼くんとすれ違った。遠くから見てもやっぱり綺麗な目をしているなあ、と見惚れてしまう。


 その綺麗な目が動いて、そっとわたしを捉えて、


 つ、と逸らされた。


(あ……)


 そのときの気持ちをどんな風に言えばいいのかわからない。ショックを受けた、なんていうのは傲慢すぎる。今まで目を逸らしてきたのは自分なのだから。その視線に勝手な期待をしていたのも自分なのだから。そう、翼くんに彼女ができるというのは、その眼差しに余計な意味づけをしてはいけないということだったのだ。優しさは優しさでしかないと思わなくてはいけないということなのだ。わたしはずっとそれを知っているつもりでいながら、やっぱりわかっていなかったんだ。


 時間は過ぎて行った。クラスの生徒の大半は進路が決まった。わたしも第一志望に合格し、残りの日々を数少ない友人と過ごした。その日々には魔法も空想も、澄んだ瞳もなかったけれど、それはそれで楽しくて暖かな毎日だった。


 そんな学校生活も、あと三日を残すのみとなった日のことだった。


 先生からの頼まれごとを終えると、先程まで降っていた雨は止んでいた。雲間から覗く青空は、どんな絵の具でもつくれないような輝きを湛えている。まだ空気は少し冷たくて、わたしはマフラーを何度も直しながら下駄箱へ向かった。


 上履きを脱いでローファーを出して……と、いつもの動作も、あと三回くらいか。数えてみると、こんなどうでもいい動作も無駄にできない気がするから不思議だ。


 外に出て、冷たい風に身をすくめたときだった。


「お疲れー、古川」


 懐かしい声、ぽつんと佇む人影。そこに立っていたのは何度も何度も目で追った、けれど決して見飽きることのない人。


 翼くんは校舎から出てきたわたしに歩み寄ると、あの澄み切った眼差しでわたしを見て、笑顔になった。


「蓮見くん……」
「久しぶりだね」
「……久しぶり」


 話しかけてくれて嬉しいというよりも、驚いた。やっぱり背が伸びているのが、近くで見るとよくわかる。


 わたしがどぎまぎしている間に、翼くんは鞄をごそごそやって、暗色の折りたたみ傘を取り出した。


「遅くなってごめん。ずっと返そうと思ってたんだけど」


 ああ、と思った。これを返すためか。わたしと翼くんの間にはもうなんの接点もないと思っていたけれど、まだこれが残っていたんだな。


「……返さなくてもよかったのに」


 口ごもると、翼くんは首を横に振ってわたしに傘を押し付けた。


「持ってて欲しいんだ。あのときは本当に助かったよ」
「大したことじゃないから」


 そう、大したことじゃない。あのときは精一杯のお礼のつもりだったけれど、やっぱりこんな傘一本では足りなかった。翼くんは、他の何よりもわたしの心を埋めてくれていたのだから。


「俺さ。雨に濡れなくて済んだから、こんなこと言うわけじゃないんだ」


 わたしが鞄に傘をしまうと、彼は唐突に言った。わたしは首をかしげる。


「……どういうこと?」
「俺、あの時……偶然置いてかれたとかそんなんじゃなくてさ。ハブられてたんだよ。あ、部活でね」


 全く聞いたことのない話に、わたしは目を見開いた。


「ひどいね……」
「まあ、もう済んだことだからいいんだけどさ。元凶だったやつは部活やめたしね。でもそんときはすげー悔しくて。クラスでも同じ部活の奴は口利いてくれねえし、他のやつもいつそうなるかわからなかった。色々と不安で、勉強も手につかないっつーか、それを言い訳にしてサボッてた部分もあるけど」


 きっと、つらかっただろうと思う。それは想像というよりも、共感だった。それでも、なんでもないことのように語る翼くんはやっぱり眩しくて、わたしは何度も頷いた。


 翼くんは空を見上げて、寂しそうに笑った。


「……でも、古川のおかげで、頑張ろうって思えたんだ」
「……わたし……?」
「うん。毎日きちんと学校に来て、苦手なことからも逃げなくて。だから俺も、古川を見習おうと思って理系に入ったんだよ」


 心が震えた。違うんだよ、あのときわたしを支えていたのは確かに翼くんだったんだよ。そう言おうとして口を開くと、熱いものがこみあげてきて、わたしはたった一言紡ぐのがやっとだった。


「……ありがとう……」


 風が吹き抜ける。思ったよりも暖かかったそれはわたしの頬を撫でて、傍に植えられていた木の枝を鳴らした。


 翼くんはふとわたしに向き直ると、真面目な表情で口を開いた。


「古川、俺さ……」
「蓮見くん。彼女、いるんでしょ。そろそろ行ったほうがいいよ」


 翼くんが何か言おうとしたのを遮って、わたしは笑顔をつくった。


 本当は、まだ話したいことはたくさんあった。あのとき言おうとした言葉、あのとき言えなかった言葉、そして今言いたいこと……なによりもたったひとつ、伝えたかったこと。でも、翼くんにはもう傷つけてはいけない人がいる。だからこれは、叶わない願いのままでとっておこう。彼女のために、なにより翼くんのために。


「それじゃあね」


 わたしは短く告げて、彼の脇を通り抜けた。唇に笑みを貼り付けたまま。


「……さくら」


 ぴたり、と足が止まる。彼の声があまりにも優しくて、今までに聞いたことのあるどんな言葉よりも優しくて、心がかすかに震えた。


「卒業式に、咲くといいな。俺、桜って好きなんだ」


 振り返ると、翼くんは一瞬目を逸らして、でもまたすぐにわたしを見つめ返した。あの澄んだ瞳で。


「きっと、咲くよ」


 そう答えると、自然と笑顔が浮かんだ。翼くんも、笑顔になる。


「そうだと、いいな」
「うん。……またね、翼くん」


 わたしが手を振ると、彼も手を振り返した。再び前を向き直ったとき、目の端から一粒の涙が落ちた。


 そう。なんの意味づけも、期待もしないならば……わたしが聞いたのは、あくまで翼くんは桜が好きってことだけだ。ずるいなあ、と笑ってしまいたくなった。


 雲間から差す光を浴びて、桜はいつしかその枝先に、大きなつぼみをつけていた。もしかしたら本当に咲くかもしれない、とわたしは思う。そのつぼみに、彼と彼女が幸せでありますように、と心から祈った。









 あれからすぐに気づいたことだけど、翼くんから返してもらった傘はわたしが貸したものじゃなかった。黒じゃなくて紺色だし、形もだいぶ違う。


 メールアドレスは一年生の頃に交換していた。返そうと思えばいつでも返せるけれど、わたしはその傘をそっと自分の机の引き出しに入れた。


 紺色の傘を見るたびに、翼くんの笑顔と澄んだ瞳を思い出す。忘れられたなら、連絡しよう。あれもこれも、そのときになればきっと言えるから。それまでは持っていよう。確かにあの時間が存在していたことの証として。


「さくら? ちょっと降りてきてー」


 階下で、母が呼んでいる。わたしは引き出しを閉じると、「はーい、ただいま」と返事をした。







サクラナク END
Novel Top